パソコンの発達

国産初のパーソナルコンピュータは1978年発売のベーシックマスター(日立)で、当時はマイクロコンピュータとか、マイコンとか呼ばれていました。中央演算装置(CPU)は0.75MHzというものでありました。0.75MHzとは1秒間に75万回足し算が出来るという意味です。パーソナルコンピュータの普及が広まったのはオペレーティングシステムWindows95の発売がなされたころからです。当時のCPUは66MHzとベーシックマスターの時代に比べ、100倍近く高速化していました。1990年代後半は、CPUの高速化が著しく、Windows98が発売された1998年には400MHzまで高速化しています。現在では3.5GHzと、1995年のころと比較しても、50倍以上の高速化が実現されています。CPUの構造自体も改良され、一回に遅れるデータの数、1クロックで扱える命令の数も増え、実際にはCPUの周波数以上の性能向上があります。扱えるデータサイズも増大しました。Windows Vistaでは、推奨メモリーサイズは1GBです。ベーシックマスター当時の16KBと比較した場合、6万倍以上のデータが扱えるようになっています。
 このように、現在のパーソナルコンピュータはちょっと前の時代のスーパーコンピュー並みの処理能力を持っており、当時はスーパーコンピュータで無ければ不可能と思われた精密な計算も、机に置いたパーソナルコンピュータで可能になってまいりました。
1978 ベーシックマスター(日立) 750kHz 16KB 89800円 国産初のパソコン(8 bit)
1979 PC8001(NEC) 2.3MHz 16KB 168000円 (8 bit)
1981 PC8801(NEC) 4MHz 64 kB 228000円 (8 bit)
1982 PC9801(NEC) 5MHz 128 kB 298000円 (16 bit)
1984 マッキントッシュSE30(アップル) 16 MHz 128 kB 約100万円 (16 bit)
1987 PC9801VX21(NEC) 8 MHz 640 kB 433000円 (16 bit)
1992 PC9801RA21(NEC) 16 MHz 1.6 MB 248000円 (32 bit)
1994 PowerMac8100 90 MHz 16 MB 788000円 RISCコンピュータ
1995 PC9821Xa13(NEC) 133 MHz 32 MB 318000円 ペンティアム(32 bit)
Windows95の発売とともに多様なパソコンが販売
1995 pentium 66 MHz
1998 Pentium II 400 MHz
1999 Pentium III 700 MHz
2000 Pentium 4 〜3 GHz

CPUの処理能力はパソコンが登場した1978年の物と単純比較では、400倍以上の速度向上となりますが実際にはもっと計算速度は向上しています。
まずは、データの取り扱うサイズです。
1978年当時は 8 bit[65,536(64K)]の数値を処理していましたが、2010年では64 bit [(1.8×10
19までの数値を表現)と取り扱うデータ量が3×1014倍になっています。
さらにデータ転送速度、RAMサイズ増大、アルゴリズム改良などが行われ、実際の計算速度は1980頃に比べとてつもなく大きくなっています。


アポロ計画時(1970年ごろ)にもコンピュータは使われていました。この時代のNASAのコンピュータに比べてNintendo DS (CPU 66 MHz, 32 bit)の方が計算能力という点では優れているともいえます。


テウリレンという天売島の近くで単離されたトリテルペンエーテルの分子力学計算を例に挙げてみます。
1986年当時、大沢映二先生が大型計算機用に開発されたMM2をPC98シリーズで実行できるように移植されていました。
これを利用させていただき、テウリレンの配座解析をしたことがあります。
この時は一つの配座を最適化するのに8時間程度かかっており、1週間に解析できる配座の数も限られていました。
同じ分子を、2010年に分子力学法で計算してみました。プログラムはSpartan08に組み込まれているMMFFという力場ですが、基本的に計算の内容はよく似ています。
計算を行ってみると、計算にかかる時間は5秒以下でした。
時間を割り算してみると、計算速度は35万倍になっていることになります。
計算方法が完全に同じでないので正確な比較は難しいのですが、とてつもなく速くなっていることに間違いはありません。



現在では、マルチコアCPUを搭載したパソコンも普及してきました。マルチコアCPUでは、中央演算装置(CPU)を複数(通常二個から4個、6個というCPUも登場している)持っているため計算速度の向上が望めます。
そのためには
、タスク(計算する内容)を複数のCPUに効率よく分配しなければマルチコアCPUの威力は全く発揮できません。
最近のSpartan10やGaussian09といったソフトウェアではマルチCPUに対応しており、たとえばこれまで4日かかっていた計算が、4コアCPUを用いればうまくいけば一日で計算が終了することになり、これまで諦めていた計算も現実的になってきました。また、パソコンの場合、長時間の計算はアクシデントによる切断(ケーブルをひっかける、落雷による停電など)の危険もあり、計算時間の短縮は重要な問題です。
マルチコアに対応させるには、64bitデータ処理が可能なOS(windows7)が要求されます。メモリーもコア数に応じて搭載する必要があり、4コアの場合8ギガバイト以上ないと不安です。